2020年8月8日にオンライン勉強会を開催。30分でふるさと納税のことについて話しました。要約を掲載します。
1. ふるさと納税の人気は急上昇している
おそらくこのお話をお聞きになっているほうの半分ぐらいの方はふるさと納税を実際にされているのではないかと思います。残りの方は、ふるさと納税という単語は聞いたことがあるけれども実際にやったことがないというではないかと思います。今日はふるさと納税をやったことがないけども、話は聞いてやろうという方のためにお話したいと思います。
ふるさと納税は平成20年から始まっています。最初の5、6年は低迷していましたが、ワンストップ納税という制度が平成27年に採用されてから急成長しています。平成30年度は総額5127億円もの納税額になりました。すごいですね。では、どうして「ふるさと納税」という制度ができたのでしょうか?そこを説明します。
2. ふるさと納税のきっかけ
平成19年にその当時の総務大臣からの問題提起がありました。
多くの国民が地方の故郷で生まれて教育を受けて育ったのに進学や就職となると都会に出る。そして、都会で納税をする。地方からするとせっかく育てた彼らから納税はない。これはちょっと考えてもいいんじゃないの。せめて納税先を選べるようにしてもらえたらどうだろう。
とまぁこんな感じなんですね。このことがきっかけとなって「ふるさと納税」という制度ができたわけです。
3. ふるさと納税が投げかけた意義
ふるさと納税の投げかけた意義は大きく三つあります。
3.1 納税者の選択
納税者という観点から見ると、われわれは納税先を自由に選べるわけではありませんね。国もしくは自分が居住している地方自治体への納税が基本となっています。ここで納税先を自分自身で選べるとしたらどうでしょう。「納税」ということに対して、その大切さを改めて自覚する貴重な機会です。自分たちが納税する「税金の使いみち」について、大いに感心を寄せるでしょう。
3.2 ふるさとの大切さ
みなさんにとって、「ふるさと」の定義って、なんでしょう?
生まれたところだったり、育ったところだったり。あるいは転校した先、就職後に勤務赴任先となった土地、結婚して移り住んだ場所。その人その人によってふるさとの定義は違ってきますね。ですので、ふるさとっていう定義はありません。あなたが「ふるさと」と思ったところが「ふるさと」です。
3.2 自治意識の進化
地方財政が厳しいという理由で、地方自治の難しさを嘆いてばかりではどうしようもありませんね。ふるさと納税によって税収が増える道が開けました。寄付をしていただくためには、自治体の魅力をしっかりとアピールしていかなければいけません。自治体の長は、市町村内のかただけではなく、外の方々に対しても、あらためて自治意識をしっかりもって対応しなければならなくなりました。
4 ふるさと納税と返礼品のシンプルな関係
わかりやすいように説明してみましょう。
まず、寄付をする
まずは自分自身が寄付したいなーと思うふるさと納税先の団体を選びます。その団体に対していくらか寄付をします。ふるさと納税の専用サイトを通じて寄付するケースがほとんどですね。支払いは、銀行引き落としやクレジットカードが使えます。寄付するときに、「返礼品」を希望するかどうかを聞いてきます。「返礼品」を希望せずに純粋に寄付のみすることもできますが、多くの方は返礼品を目当てに寄付をしています。
返礼品が送られてくる
希望するとその団体から「返礼品」というものが送られてきます。「返礼品」は、寄付する額の3割程度とされています。1万円を寄付したら、3,000円相当の返礼品です。また、返礼品は、「地場産業品」です。金券や、その自治体と関係のない電化製品などは返礼品として扱うことを禁止されています。
ふるさと納税先の自治体から住所地の市町村に納税の連絡
その後、ふるさと納税先の団体はご自身の住んでいる住所地の市町村に対して、これこれの納税がありましたという連絡をします。すると納税住所地の市町村は、翌年の住民税から寄付した額を控除してくれる。(ただし自己負担は2000円)こういう制度です。
4.1 ふるさと納税の控除額の計算
それでは具体的にどのように控除されるのかを説明します。
この例題は、年収700万円の人で所得税が20%の方です。
この方の場合まずふるさと納税として3万円を寄付したとします。自己負担額が2,000円ですので控除額は28,000円と計算されます。この28,000円のうち、所得税からの控除が5,600円、住民税からの控除が22,400円となります。
所得税からの控除 = 5600円
この例題の人は所得税が20%なので、以下の計算式で控除額を算出します。
(30,000円 - 2,000円)× 20% = 5,600円
住民税からの控除 = 22,400円(2,800円+19,600円)
住民税からの控除は基本分と特例分に分けて計算します。
1)個人住民税 税額控除(基本分)
住民税は10%なので、控除額全体に対して10%分を控除します。
(30,000円 - 2,000円) × 10% = 2,800円
2)個人住民税 税額控除(特例分)
(30,000円 - 2,000円) × (100% - 10% ー 20%) = 19,600円
4.2 確定申告とワンストップ納税
次に確定申告とはストップ納税の仕組みの違いを説明します。フリーランスの方は確定申告をされているのでスライドの左側をご覧ください。お金の動きに絞って説明します。
確定申告
「①ふるさと納税」をすると、納税先団体から「②受領書」が届きます。これらの書類で「③確定申告」をします。すると、申告した年分の所得税から還付があります。一方で、翌年度分の「⑤住民税」から、減額されます。
ワンストップ納税
この制度のお陰でサラリーマンの方がふるさと納税をやりやすくなったと言われています。
スライドの右を御覧ください。
サラリーマンの方は基本的に年末調整で納税は完結しています。基本的にふるさと納税をすると確定申告をしなければなりません。(医療費控除などを申告するサラリーマンは確定申告が必要)
これは面倒です。そこでワンストップ納税という制度が導入されました。ふるさと納税をする自治体の数が5箇所までだったら書類のみで申請が終わるという制度です。わざわざ確定申告に出向かなくてもいいという制度です。
5箇所というのは、一箇所に何回も寄付してもかまいません。トータルで5箇所の自治体以内であれば、書類の提出だけで納税が完了します。ただし確定申告で年末調整は完了していますので所得税については本年度分からの還付はありません。その代わり、所得税還付分に相当する分を上乗せして、翌年度の住民税から控除されます。確定申告する場合と、損得はありません。
4.3 証明書とワンストップ納税(見本)
これが実際のワンストップ納税の申請書(納税先への提出書類)と寄付金証明書の例です。
5. ふるさと納税の注意点
各種控除を受ける際に注意
医療費控除や住宅ローン控除を受けられる方もおられるでしょう。この場合は納税する住民税の額が下がりますので、負担のないふるさと納税の上限額も下がることになります。
納税額の上限はシミュレーションサイトで確認
納税額の上限を計算するのは面倒。正確な金額を把握するためにはシミュレーションサイトを利用するとよいでしょう。検索すると色々なサービスがあります。
- 総務省 寄附金控除額の計算シミュレーション(エクセルのダンロード)
- 楽天ふるさと納税 詳細版シミュレーター(2020年分)
- ふるさとチョイス 控除上限額シミュレーション
- ふるなび 控除シミュレーションと計算方法
一度にたくさん申し込まない
返礼品は季節商品や地場産業品が多いので保冷品が多いのが特徴です。小口でたくさん申し込んだりすると一度に送ってきたりします。冷蔵庫がバンバンになってしまったりするので注意してください。
支払名義に注意
夫婦であっても別会計です。クレジットの名義が違うと当人の寄付とみなされないこともありますので注意してください。
6. まとめ
ふるさと納税の概略を簡単に説明しました。これからふるさと納税を始めようという方の参考になればと思います。
7. ご注意願いたいこと
・投資、年金、保険、相続、税金等の実務は、専門資格領域となるため、FPがその範疇の業務をお手伝いすることは禁じられています。具体的な事項につきましては、弁護士、税理士、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
・引用した資料は、引用先を示すとともに、最新のものとなるように努めますが、発表時期(もしくは、閲覧時期)によっては、陳腐化している可能性もあります。そのため、実際の状況に照らし合わせて、都度、ご確認していただくようにお願いいたします。
・本資料は、2020年8月8日現在において、入手できる資料を元に構成されております。