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答えを持っていくな。見つけにいけ。

F01|Find|発見の法則

提案をするとき、私たちはつい「よい答えを持っていかなければ」と考えます。相手の状況を調べ、データを分析し、課題を考え、解決策を準備する。もちろん、準備は必要です。
しかし、長く提案の仕事をしてきて、私はむしろ逆ではないかと考えるようになりました。
提案者が持っていくべきものは、答えではなく仮説です。
本当の答えは、相手と話し、現場を見ながら、一緒に見つけることがあります。

古いワイナリーで見つけた一枚の写真

ある古いワイナリーのウェブサイト改善をお手伝いしたことがあります。
サイトへのアクセスが少なく、何か魅力的なコンテンツを見つけられないかと考えていました。
そこで社長と一緒に、昔のアルバムを見せてもらいました。その中に、一枚の古い写真がありました。私には気になる写真だったので、社長に尋ねました。
すると、その写真には思いがけない話がありました。

過去に競合企業との商標をめぐる争いがあり、その写真に写っていた日付や当時の様子が、自社が以前からその商標を使っていたことを示す証拠となったというのです。
実際に、その写真は争いを解決するうえで重要な役割を果たしていました。
私は思わず聞きました。

「それなら、なぜこの写真をウェブサイトに載せていないのですか?」

社長も、
「そういえば、なぜ載せていなかったんだろう」
という反応でした。
そこで写真とその背景をサイトに掲載しました。
すると、そのページは多くの人に見られるようになりました。

私が持っていった改善案の中に、「商標を守った古い写真を掲載する」という答えがあったわけではありません。

答えは、相手との会話の中で見つかったのです。

最初に考えていた提案を捨てた美容整形クリニック

美容整形クリニックのサイト改善をお手伝いしたときのことです。

私は当初、
「医師の技術力やスタッフのサービス品質を、もっとサイトで伝えたほうがよい」
と考えていました。決して間違った提案ではなかったと思います。
ところが院長と話をしていると、こんな話が出てきました。
「患者さんから、とにかく質問が多い。答えるのが大変なんです」
そこで考えました。

その質問は、本当にただの負担なのだろうか。

患者さんが何度も尋ねるということは、それだけ知りたい人がいるということです。
だったら、その質問と回答をウェブサイトに掲載すればいい。
そこで、患者さんから実際によく聞かれる質問をQ&Aとして掲載しました。
結果として、サイトへのアクセスは大きく増えました。
このときも、私が最初に持っていった答えが成功したわけではありません。
院長との会話から、別の答えを見つけました。

提案前の準備が不要という意味ではない

「答えを持っていくな」と言うと、
「では、何も考えずに相手のところへ行けばいいのか」
と思われるかもしれません。

もちろん違います。
データを調べる。
相手について調べる。
課題を想定する。
改善案も考える。

私は、できるだけ準備して相手のところへ行きます。
ただし、そこで大切なのは、

準備した答えを正解だと思わないことです。

準備したものは、あくまで仮説です。
現場を見て、相手と話して、その仮説が間違っていると分かったら変えればいい。

むしろ、想定していなかった事実が出てきたときこそ、提案のチャンスなのかもしれません。

自分の提案を証明しようとしない

提案者は、自分が一生懸命考えた案ほど捨てにくくなります。
調査にも時間をかけています。資料も作っています。

だから相手との打ち合わせでも、無意識のうちに、
「自分の案が正しいことを説明しよう」
としてしまうことがあります。

しかし、それでは相手の話から新しい答えを発見しにくくなります。

提案の目的は、自分の仮説が正しいことを証明することではありません。

相手にとって、よりよい答えを見つけることです。

自分の仮説が外れたことで、もっとよい答えが見つかったのなら、それは失敗ではありません。
むしろ、提案が前に進んだということです。

実践するときに意識していること

私は提案の場で、次のようなことを意識しています。

  • 答えではなく、仮説を持っていく
  • データだけで判断せず、相手の話を聞く
  • 気になったことは、その場で尋ねる
  • 相手が何気なく話したことを聞き流さない
  • 自分の仮説と違う事実を歓迎する
  • よりよい答えが見つかったら、最初の案を捨てる

提案する側が少し余白を持っているほうが、相手も話しやすくなります。

そして、その何気ない会話の中に、本当の課題や価値が隠れていることがあります。

提案は「発見」から始まる

「提案の成長スパイラル」では、最初の段階を Find|発見 としています。

しかし、Findは最初の一回だけではありません。
提案を実行し、相手が成長すれば、それまで見えなかった課題や可能性が見えてきます。

そして、また新しいFindが始まります。
だから私は、提案するときにこう考えています。

答えを持っていくな。見つけにいけ。

提案とは、こちらが知っている正解を相手に教える仕事ではありません。

相手と一緒に、まだ見えていない答えを発見する仕事なのです。

提案の成長スパイラル:Find|発見
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