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相手の中にある価値を探せ

F03|Find|発見の法則

提案を考えるとき、私たちはつい「新しい価値をつくらなければ」と考えます。

新しい商品。
新しいサービス。
新しいコンテンツ。
新しい見せ方。

もちろん、新しいものをつくることが必要な場合もあります。
しかし、その前にやるべきことがあります。

価値をつくる前に、そこにある価値を探してみる。

本人にとって当たり前になっていることの中に、外から見ると、とても魅力的なものが隠れていることがあります。

「天ぷらを揚げているだけ」の動画

私が長年続けている勉強会で、商店街の動画配信について、とても興味深い発表がありました。
商店街のお店を動画で紹介し、人を呼び込もうという取り組みです。

ある天ぷら屋さんでは、ご主人たちに店のことや仕事への思い、ポリシーなどを語ってもらい、その様子を動画にして配信していました。ところがあるとき、天ぷらを揚げているところを撮影して、その動画も配信しました。
すると、予想もしなかったことが起こりました。

天ぷらを揚げている動画が、それまで配信したすべての動画の中で、ダントツの再生数を記録したのです。

なぜ見られたのか、今でも分からない

なぜ、天ぷらを揚げている動画が、それほど見られたのでしょう。

揚げる音がよかったのかもしれません。
職人の手際を見るのが面白かったのかもしれません。
揚げたての天ぷらのおいしさを想像したのかもしれません。

いろいろな説明はできるでしょう。

しかし、本当の理由は分かりません。

発表を聞いた当時も不思議でしたし、今振り返ってみても、なぜあれほどの反応があったのか、私には分かりません。

ただ、一つだけ確かなことがあります。

天ぷら屋さんにとって何でもない日常の風景を、見る人たちは「見たい」と思ったのです。

当たり前の中に、価値が隠れている

天ぷら屋さんにとって、天ぷらを揚げることは毎日の仕事です。
珍しいことではありません。だから、自分たちからすれば「わざわざ動画にして見せるほどのものだろうか」と思っても不思議ではありません。
一方で、店のポリシーや仕事への思いは、「お客さんに伝える価値のあるもの」と考えます。ところが、実際に大きな反応があったのは、日常の調理風景でした。

自分にとって当たり前のことほど、自分ではその価値に気づきにくい。

これは、提案するときにもよく起こります。

長年続けている仕事。
いつもの作業。
昔から使っている道具。
社員にとって常識になっている技術。
何気なく繰り返している習慣。

相手が「こんなの普通ですよ」と言ったところに、意外な価値が隠れていることがあります。

再生数だけでは終わらなかった

この話には、もう一つ興味深い続きがあります。
動画が多く再生されただけではありません。

その後、単身赴任の人たちの買い物が増えたという話でした。

天ぷらを揚げる動画を見たことと、その後の購買行動がどこまで直接結びついていたのか。それも厳密には分かりません。それでも、単なる再生数の変化だけではなく、実際の店で新しい動きが起きたことは確かです。

店側が「これを伝えよう」と考えていたものではなく、日常の中にあったものが人を動かしたのです。

価値をこちらで決めつけない

提案者は、相手の価値を見つける仕事をします。

しかし、

「御社の強みはこれです」
「お客様が求めているのはこれです」

と、こちらが勝手に決めてしまうのも違います。

気になったものがあれば、外に出してみる。
人に見てもらう。
反応を観察する。

そこで初めて、本人も提案者も気づかなかった価値が見えてくることがあります。

価値は、分析してから見つかるとは限りません。
試してみた結果から、価値の存在に気づくこともあります。

F01、F02、そしてF03

F01では、

「答えを持っていくな。見つけにいけ。」

としました。

F02では、

「本当の課題を見つけろ。」

としました。

そしてF03では、課題だけでなく、相手がすでに持っている価値にも目を向けます。

問題を探すだけが提案ではありません。

相手の中にすでにあるものを見つけ、それまで見えていなかった価値として表に出すことも、提案の仕事です。

だから私は、提案するときにこう考えています。

相手の中にある価値を探せ。

なぜ、あの天ぷらの動画があれほど見られたのか。

今でも、私にはよく分かりません。

しかし、それでいいのだと思います。

価値は、見つけてから理由を知ることもある。

提案の成長スパイラル:Find|発見
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