F06|Find|発見の法則
提案をするとき、私たちは一生懸命説明しようとします。
なぜ、この会社が優れているのか。
なぜ、この商品には価値があるのか。
なぜ、この施策を行うべきなのか。
相手に理解してもらおうとすればするほど、説明は増えていきます。
しかし、長く提案をしていると、どれだけ言葉を重ねても伝わらないことがあります。
その一方で、たった一枚の写真や一つの数字が、それまでの説明を一瞬で超えてしまうことがあります。
説明する前に、そのことを示す事実はないか。
私は、そう考えるようになりました。
一枚の古い写真
F01でも紹介した、ある古いワイナリーのウェブサイトを改善したときの話です。
サイトに掲載できる魅力的なものがないか、社長と一緒に昔のアルバムを見ていました。
その中に、昔の露店を写した一枚の写真がありました。
何気なくその写真について尋ねると、社長から思いがけない話を聞きました。
かつて商標をめぐって他社と争いになったとき、その写真が証拠として使われたというのです。
写真には、その時代に実際に商標を掲げて商売していた様子が写っていました。
そして、その写真が商標を以前から使用していたことを示す証拠となり、裁判でも役に立ったという話でした。
私は社長に尋ねました。
「それなら、なぜこの写真をウェブサイトに載せていないのですか?」
「昔から使っています」と説明するより強いもの
「私たちは昔からこの商標を使っています」
そう文章で説明することはできます。
会社の歴史について長い文章を書くこともできます。
しかし、一枚の写真には、
「本当に、その時代にそこにあった」
という事実が写っています。
しかも、その写真は単なるイメージ写真ではありません。
実際に裁判でも証拠として使われた写真でした。
長い説明をしなくても、写真そのものが会社の歴史を語っていたのです。
ウェブサイトに掲載すると、その写真は多くの人に見られるコンテンツになりました。
私が新しい物語を作ったわけではありません。
すでに存在していた事実を、見えるところに出しただけでした。
「すごい」と言うより、すごいと分かるものを見せる
ウェブサイトには、たくさんの説明があります。
「高い技術力があります」
「長年の実績があります」
「お客様から信頼されています」
「地域に根ざした会社です」
どれも間違っていないかもしれません。
しかし、自分で「すごい」と言うだけでは、なかなか相手には伝わりません。
では、そのことが分かる事実はないでしょうか。
長年使われてきた道具。
昔の店舗や工場の写真。
実際のお客様の言葉。
積み重ねてきた数字。
現場で起きた出来事。
今も残っている記録。
こうしたものには、説明とは違う力があります。
「すごい」と言うより、すごいと分かるものを見せる。
事実を見せれば、それをどう評価するかは相手に委ねることができます。
事実は、会社の中に眠っている
問題は、こうした事実を本人たちが価値だと思っていないことです。
毎日見ているもの。
昔から保管しているもの。
社内では誰でも知っていること。
本人たちにとって当たり前なので、わざわざ外へ伝えようとは思いません。
ワイナリーの古い写真もそうでした。
裁判で証拠として使われるほど重要な写真なのに、ウェブサイトには掲載されていませんでした。
だから提案者は、説明を考えるだけでなく、事実を探す必要があります。
資料を見る。
昔の写真を見る。
現場を歩く。
担当者の話を聞く。
記録を見る。
そこに、本人たちが見過ごしている事実が眠っていることがあります。
データもまた、事実の一つ
F04では、
データだけでなく、現場を見ろ
としました。
これは、データを軽視するという意味ではありません。
データもまた、実際に起きたことを示す大切な事実です。
アクセスが増えた。
問い合わせが増えた。
購入する人が増えた。
あるページだけが繰り返し読まれている。
こうした数字は、人の行動によって残された事実です。
一方で、現場には数字になっていない事実もあります。
だから、どちらか一方を見るのではありません。
数字として残った事実と、現場に残っている事実の両方を見る。
そこから、説明だけでは見つからないものが見えてきます。
事実と解釈を混同しない
もう一つ、気をつけていることがあります。
事実と、それについての解釈は同じではありません。
「この写真がある」
これは事実です。
「この写真を見れば、誰もがこの会社を信頼する」
これは解釈です。
「問い合わせが増えた」
これは事実です。
「この施策だけが原因で問い合わせが増えた」
これは、検証しなければ分かりません。
提案では、事実を根拠にしながらも、そこから先を勝手に決めつけないことが大切です。
事実は強い。だからこそ、事実以上のことを語らない。
私は、この姿勢も大切にしています。
発見した事実を、相手に渡す
F01では、
答えを持っていくな。見つけにいけ
としました。
F02では、本当の課題を探しました。
F03では、相手の中にある価値を探しました。
F04では、データの外にある現場を見ました。
F05では、困り事の中に隠れている価値を見つけました。
そしてF06では、そこで発見したものを、言葉で飾りすぎないことを考えます。
説明を重ねる前に、事実を見せる。
評価までこちらで決めてしまわず、相手にも考えてもらう。
だから私は、提案するときにこう考えています。
事実には、説明を超える力がある
よい提案とは、うまく説明することだけではありません。
相手が自分で納得できる事実を見つけ、それを目の前に置くことも、提案の大切な仕事なのです。
提案の成長スパイラル:Find|発見
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