──提案が動かない理由は、内容の外側にある
その提案は、内容としては正しかった。
論点も整理されていて、言葉も丁寧だった。
それでも、場の空気が少し固まったまま、
話は次に進まなかった。
こうした場面を振り返るとき、
私たちはつい「言い方が悪かったのかもしれない」と考える。
もう少し柔らかく言えばよかった、
もう少し配慮すべきだった、と。
けれど実務の現場では、
問題は言い方以前のところにあることが多い。
その提案が、どんな場で、どんな関係性の中で出されたか。
そこが噛み合っていないと、
内容の正しさは、うまく届かない。
同じ提案でも、
雑談の延長で出されるのと、
正式な会議の場で出されるのとでは、
受け取られ方はまったく違う。
また、
日頃から信頼関係が積み重なっている相手と、
まだ距離感が定まっていない相手とでは、
同じ言葉が持つ重さも変わる。
場には、目に見えないルールがある。
誰が話してよいのか、
どこまで踏み込んでよいのか、
今は決める場なのか、考える場なのか。
それらは明文化されないまま、
空気として共有されている。
提案が止まるとき、
内容が否定されているとは限らない。
その場の空気に対して、
少しだけタイミングや役割がズレているだけ、
ということもある。
関係性も同じだ。
対等な議論ができる関係と、
調整や合意を前提とした関係とでは、
求められる提案の形が違う。
どちらが良い悪いではなく、
前提としている関係性が違うだけだ。
正しいことを言う前に、
いまここは、どんな場なのか。
自分は、この場でどんな役割を期待されているのか。
そこに目を向けることで、
提案の通り道が見えてくることがある。
伝わらない理由を、
説明力や説得力の問題に押し込めてしまう前に、
場と空気と関係性を、一歩引いて眺めてみる。
それもまた、提案を前に進めるための、大切な実務だ。
その提案は、
いまの場と関係性にとって、
どんな位置づけだっただろうか。
