動き出したあとに、手を離すという仕事

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──提案が「自分ごと」になる瞬間

提案が前に進み、
誰かが動き出したあとに、
ふと立ち止まる瞬間がある。
ここから先も、関わり続けたほうがいいのだろうか。
それとも、もう任せてよいのだろうか。

伴走する立場にいると、
この判断は意外と難しい。
動きが止まるのが怖くて、
つい手を出し続けてしまうこともある。
確認し、補足し、方向を修正し、
気がつくと、判断の主体がこちら側に残ってしまう。

けれど、提案の目的は、
相手を動かし続けることではない。
相手が、自分で引き受けて動ける状態になることだ。

これまで見てきたように、
提案が止まる理由は、
正しさでも、理解でも、
言葉でも、場の空気でもないことがある。
前提がずれていたり、
問いが閉じていたり、
判断を引き受ける余地が残っていなかったりする。

そうした条件が一つずつ整っていくと、
ある瞬間、
「では、こうします」と、
相手の言葉で語られる場面が訪れる。
そのとき、提案はもう説明ではない。
相手自身の選択に変わっている。

この瞬間を見逃さないことが、
伴走する側にとっての大切な仕事だ。
それ以上、前に出ない。
答えを補わない。
判断を奪わない。

伴走とは、
ずっと隣に立ち続けることではない。
一緒に考え、
一緒に迷い、
そして、相手が自分の足で立ったところで、静かに手を離すことだ。

提案がうまくいったかどうかは、
その場で拍手が起きたかでは決まらない。
あとから、
誰かが自分の判断として動いていたか。
それだけが、静かな答えになる。

その提案は、
相手が「自分で引き受ける」余地を、
ちゃんと残していただろうか。

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